小学生球児がリアルに追う夢や憧れは、夏の2大全国大会のほかに「NPB12球団ジュニアトーナメント」がある。NPB(日本プロ野球機構)が球界再編問題に揺れた翌年、2005年に始まった年末恒例の学童球児の祭典だ。当メディアでは『2024注目選手』として、延べ25人を紹介してきているが、そのうち9選手がNPBのジュニアチーム(1球団16人)に選出されている。開幕まで1カ月を切ったこのタイミングで、改めて顔ぶれを紹介していこう。
(動画&写真&文=大久保克哉)
※9選手プレー動画のプレイリスト➡こちら
NPB12球団ジュニアトーナメントは、5・6年生16人のジュニアチームを各球団が編成し、日本一を決するもので、2005年に第1回大会を福岡ヤフードームで開催した。コロナ禍の2020年は、夏の全国大会も高校野球の春夏甲子園も中止されたなかで、年末のこの祭典は関係各所の尽力と理解によって実施され、懸命に白球を追う全国の少年少女の夢がつながれた。
スタートした当初は12球団の温度差が激しく、メンバー選考は地元の学童野球関係の組織や要人にほほ丸投げという球団も。一方で、北海道に移転したばかりだった日本ハムは、開催初年度から全道対象のセレクションを実施。巨人は2006年から小学生対象の通年スクール(アカデミー)を開校するなど、競技人口激減の流れをいち早く察知した球団の本気の取り組みもあった。
2005年の第1回大会、ロッテJr.でプレーした近藤健介(現ソフトバンク)
現在は10球団が、ジュニアチームの活動とは別にスクールを運営。また、この小学生の夢舞台の経験者から、ドラフト指名選手が毎年生まれていることも特筆したい事実だ。今季のパ・リーグMVPに輝いた近藤健介(ソフトバンク)は、第1回大会出場者でもある。
歴史を重ねるごとに温度差も解消されてきて、現在はメンバー選考にどの球団もセレクションを実施。1球団16人のジュニア選手となるのは至難で、夏の2大全国大会出場にも匹敵する栄誉やステイタスに。12球団の所在地に偏りはあるものの、誰でもチャレンジできる。そういう意味では、NPBジュニア入りは「個人の夢」の最高峰と言えるだろう。
埼玉西武ライオンズJr.東京・鶴巻ジャガーズ
園部 駿
※4月9日公開記事➡こちら
『学童野球メディア』の注目戦士からジュニア入りした9選手のうち、夏の全国大会の最終予選となる都道府県大会に出られなかった選手は2人いる。
園部駿がプレーする東京・鶴巻ジャガーズは、全国予選は地元の新宿区大会で敗退。だが、持ち前のフィジカルの強さに剛速球と打球の飛距離をもって、西武ジュニアに選ばれている。
もう1人、中木辰弥が投打二刀流で引っ張った滋賀・笠縫東ベースボールクラブは草津市予選で敗退。それでもオリックスジュニアを目指し、左打席から本塁打を量産し続けて「個人の夢」を叶えた。謙虚で明るい性格も評価されたのかもしれない。
オリックス・バファローズJr.
滋賀・笠縫東ベースボールクラブ
中木辰弥
※6月20日公開記事➡こちら
東京・旗の台クラブの寺村陸(DeNAジュニア)は、都大会3位決定戦に敗れて全国出場をあと一歩で逃したものの、この試合で左腕から109㎞をマーク。気合いも乗った勝負球の球威が際立っていた。また、同チームは片山龍和(巨人ジュニア=捕手)と梶原大誠(ロッテジュニア=遊撃手)の計3人のジュニアを輩出している。
横浜DeNAベイスターズJr.
東京・旗の台クラブ
寺村 陸
※1月15日公開記事➡こちら
東京・高島エイトのエース・鈴木煌大(巨人ジュニア)は右の本格派。今年に入って球速も球威もどんどん増してきて、5月の時点で最速105㎞をマークした。全国予選の都大会は2回戦で大敗したものの、自ら課題としていた打撃での鋭い打球も目を引いた。
また、その鈴木と必勝パターンを確立してきた左腕・平野竜都も同じく巨人ジュニアに選ばれている。
読売ジャイアンツJr.
東京・高島エイト
鈴木煌大
※5月15日公開記事➡こちら高島エイトのエース右腕も攻略して都大会を制し、全国出場した船橋フェニックス。このチームをパワフルな投打二刀流でけん引してきたのが松本一だ。小5の春まで硬式でプレーしていた松本は、母子で猛特訓を続けながらU12侍ジャパンとNPBジュニア入りを期して軟式へ転向。日の丸戦士の夢は持ち越したが、DeNAジュニアに選ばれて主将も務めている。
また、その松本にも負けない個性に変幻投法と鉄壁の三塁守備で、夏の全国3回戦進出に貢献したのが木村心大(巨人ジュニア)だ。ちなみに、同チームからは、半田蒼馬(楽天ジュニア=二塁手)、竹原煌翔(巨人ジュニア=捕手)、長谷川慎(同=投手)、吉村駿里(DeNAジュニア=投手)の計6人がNPBジュニアに選ばれている。
横浜DeNAベイスターズJr.
東京・船橋フェニックス
松本 一
※3月26日公開記事➡こちら
読売ジャイアンツJr.
東京・船橋フェニックス
木村 心大
※11月9日公開記事➡こちら
東京の超タレント軍団も打ち破り、2年連続で日本一に輝いた大阪・新家スターズの山田拓澄は、オリックスジュニアに選ばれている。5年夏の全国大会でサク越えアーチを放った長打力に加え、三盗も難なく決める走塁力は世代屈指。球速は並ながら、いつどの場面でもクールにストライクを奪える投力も、オリの貴重な戦力となっているかもしれない。
オリックス・バファローズJr.
大阪・新家スターズ
山田拓澄
※1月9日公開記事➡こちら
その山田がトップバッターとして活躍した不敗軍団・新家スターズを、全国2回戦であと一歩まで追い詰めたのが埼玉・山野ガッツで、このチームも打力に長けるタレントが複数いた。中でも捕手のスキルと振り抜きの利いたバットスイングが当初から際立っていたのが樋口芳輝だった。こちらは5年時からNPBジュニアのセレクションにトライし、2年目で晴れてヤクルトジュニアに選ばれている。
東京ヤクルトスワローズJr.
埼玉・山野ガッツ
樋口芳輝
※3月8日公開記事➡こちら
惚れ惚れする捕手と言えば、オリックスジュニアに選ばれた兵庫・東播ナインストリームの愛須翔太も外せない。適切かつコンパクトで機敏な動作からの二塁送球や、ムダのないキャッチングに思わず目を奪われる。投手兼務の三刀流で挑んだ兵庫大会は準決勝で敗れ、夏の全国出場はならなかったものの、年末の夢の祭典で存分に輝くことだろう。
オリックス・バファローズJr.
兵庫・東播ナインストリーム
愛須翔太
※4月18日公開記事➡こちら逸材はまだいる!
以上9人は『注目戦士』として取り上げた面々。12球団192人の中のひと握りに過ぎない。
また第20回記念大会となる今年は、招待チームも参戦する。NPBの二軍に参戦中のオイシックス新潟とくふうハヤテ静岡、独立リーグのBCLと四国ILでそれぞれ編成した4つのジュニアチームだ。大会は12月26日から神宮球場と横浜スタジアムで始まり、決勝は同29日に神宮を予定している。
では最後に、当メディアの大会リポートに出てきた中で、ジュニア入りを果たした選手の名前と当該記事のリンク先を北から順に紹介しよう。
■日本ハムジュニア
山下颯太(岩見沢学童野球クラブ➡関連記事)
北川遼(岩見沢学童野球クラブ➡関連記事)
■BCリーグジュニア
根岸瑛人(熊谷グリーンタウン➡関連記事)
■西武ジュニア
成田煌(西埼玉少年野球➡関連記事)
■ロッテジュニア
池邉周吾(習志野台ワンパクズ➡関連記事)
北村寛太(草加ボーイズ➡関連記事)
■巨人ジュニア
鎌瀬清正(不動パイレーツ➡関連記事)
高橋勇人(レッドサンズ➡関連記事)
■阪神ジュニア
北嶋隼士(北ナニワハヤテタイガース➡関連記事)
■広島ジュニア
中田昊輝(安佐クラブ➡関連記事)
大深修(安佐クラブ➡関連記事)
■ソフトバンクジュニア
森三千哉(金田ジュニアクラブ➡関連記事)